VPN型固定IPとプロバイダ型固定IPの最も大きな違いは、固定IPが付く対象です。VPN型はVPNサーバーを経由する利用者や端末の通信を固定し、プロバイダ型は契約したインターネット回線のIPを固定します。
自宅や外出先、複数拠点から同じIPでSaaSへアクセスするならVPN型、オフィス全体の通信を固定したり、社外から自社サーバーへ接続したりするならプロバイダ型が基本的な選択です。
| 比較項目 | VPN型固定IP | プロバイダ型固定IP |
|---|---|---|
| 固定IPが付く対象 | VPNサーバーを経由する利用者・端末・グループ | 契約したインターネット回線・拠点 |
| 利用できる場所 | インターネット環境があれば場所を問わず利用しやすい | 原則として契約回線を設置した場所 |
| 現在の回線 | 変更せず追加できるサービスが多い | 利用中のプロバイダの対応確認または変更が必要 |
| 端末設定 | 端末ごとにVPN設定が必要な場合が多い | ルーター設定後は各端末のVPN設定が不要な構成にしやすい |
| テレワーク | 対応しやすい | 社内回線を経由させる仕組みが別途必要 |
| 複数拠点 | 各拠点から同じVPNサーバーへ接続可能 | 拠点ごとに回線・固定IP契約が必要になる場合がある |
| 外部からの着信 | 非対応のサービスがある | 対応しやすいがポート・ルーター設定が必要 |
| 主な用途 | SaaSのIP制限、取引先システム、テレワーク | オフィス全体、VPNルーター、サーバー、NAS、監視カメラ |
VPN型固定IPでは、利用端末とサービス提供会社のVPNサーバーを接続します。端末からインターネットへの通信はVPNサーバーを経由し、アクセス先にはVPNサーバーに割り当てられた固定グローバルIPが表示されます。
自宅の光回線、モバイルルーター、ホテルのWi-Fiなど、端末が利用する回線が変わっても、同じVPNサーバーから通信すれば送信元IPを一定にできます。
プロバイダ型固定IPでは、契約したインターネット回線の出口に固定グローバルIPが割り当てられます。オフィス内のパソコンや機器がルーターを通じてインターネットへ接続すると、外部からは同じ固定IPからの通信として見えます。
固定IPが回線にひも付くため、オフィス内の端末をまとめて固定IP化しやすい一方、自宅や出張先から直接接続した場合は、その場所で利用している回線のIPになります。
※参照元:ASAHIネット「固定IPアドレス接続について」(https://asahi-net.jp/biz/support/guide/fixedip/)
VPN型は、VPNへ接続した端末や利用者の通信を固定IP経由にします。固定IPを利用する人だけにアカウントを発行できるため、部署や担当者を限定した導入に向いています。
プロバイダ型は、ルーターなどを通じて契約回線から外へ出る通信を固定します。オフィス内の多数の端末をまとめやすい一方、誰の通信なのかをIPだけで区別することは困難です。
誰が使うかを基準にするならVPN型、どの拠点から使うかを基準にするならプロバイダ型と考えると分かりやすいでしょう。
VPN型は、対応するインターネット環境からVPNサーバーへ接続できれば、場所が変わっても同じ固定IPを利用できます。テレワーク、出張、シェアオフィス、複数拠点など、働く場所が変わる企業に向いています。
プロバイダ型は、固定IPを契約した回線からの通信に限られます。社外の利用者が同じ固定IPを使うには、いったんオフィスのネットワークへVPN接続し、オフィス回線からインターネットへ出る構成などが必要です。
専用アプリ、OSのVPN機能、WireGuardなどのVPNクライアントへ、サービスから発行された設定情報を登録します。少人数なら導入しやすい一方、人数が増えるとアカウント発行、設定ファイルの配布、端末交換、退職者の停止などの管理が必要です。
プロバイダへの申し込み後、指定された接続情報をルーターへ設定します。設定後はオフィス内の端末をまとめられますが、回線方式やルーターの対応状況によってはネットワーク担当者や事業者による設定が必要です。
VPN型では、通信がVPNサーバーを経由し、暗号化・復号の処理も行われます。そのため、利用中の回線、VPNサーバーまでの距離や混雑、VPNプロトコルなどによって速度低下や遅延が生じる可能性があります。
プロバイダ型は、通常のインターネット回線から直接通信するため、VPNサーバーを経由する方式と比べると経路は単純です。ただし、実際の速度は契約回線、PPPoE・IPoEなどの接続方式、時間帯、ルーター性能の影響を受けます。
どちらも固定IPであること自体が通信速度を保証するものではありません。無料体験や検証期間がある場合は、実際に利用する場所、時間帯、端末で確認しましょう。
SaaSへアクセスする際の送信元IPを固定するだけなら、VPN型が適しています。一方、自社サーバーや監視カメラへインターネット側から接続する場合は、外部からの着信やポート開放に対応した構成が必要です。
VPN型固定IPサービスには、外部から利用者側へ接続する通信を受け付けないものがあります。プロバイダ型でも、ルーター、ファイアウォール、NAT、利用規約などの条件を確認しなければなりません。
「固定IPがある」ことと「外部から接続できる」ことは同じではないため、公開用途では必ず着信条件を確認してください。
1つの固定IPを複数ライセンスで共有するサービスと、アカウントごとに個別の固定IPを割り当てるサービスがあります。全員を同じ許可リストで管理するなら共有型、利用者ごとに識別・停止したいなら個別型が候補です。
大人数で利用する場合は、ライセンスの一括発行、CSV管理、IDaaS・SCIM連携、接続ログ、管理者権限などを比較します。
1拠点内の端末はまとめやすい一方、複数拠点では回線ごとに固定IPを契約する構成が一般的です。拠点数が増えるほど、回線契約、ルーター、IP一覧、障害時の連絡先などの管理対象も増えます。
VPN型では、端末、利用中のインターネット回線、VPN設定、VPNサーバー、アクセス先の許可設定を順に確認します。VPNを切断すると利用できる場合は、VPN設定やサービス側の状態が原因となっている可能性があります。
プロバイダ型では、回線、ONU、ルーター、プロバイダ認証、固定IP設定、アクセス先の設定を確認します。オフィス全体が接続できない場合は業務への影響が大きいため、保守窓口と復旧手順を決めておくことが重要です。
| 自社の状況 | 向いている方式 | 理由 |
|---|---|---|
| テレワーク中の社員がSaaSへ接続 | VPN型 | 自宅回線が異なっても送信元IPを統一できる |
| 複数拠点から取引先システムへ接続 | VPN型 | 拠点ごとの固定IP登録を減らしやすい |
| オフィス内の全端末を固定IP化 | プロバイダ型 | 契約回線から出る通信をまとめられる |
| 自社サーバー・NASを外部公開 | プロバイダ型 | 接続先を固定し、ルーター側で着信設定を行いやすい |
| 少人数だけ固定IPが必要 | VPN型 | 必要な人数分だけ導入しやすい |
| 端末にVPN設定を入れられない | プロバイダ型 | ルーター側で拠点の通信をまとめられる |
VPN型固定IPが自社に合うと判断した後は、次の3つの軸でサービスを選ぶと候補を絞りやすくなります。
初期設定だけでなく、事前相談、見積書、セキュリティチェックシート、接続トラブルまで相談できるかを確認します。社内審査を含めて支援を受けたい場合は、Glocal VPNが候補です。
利用者が多い場合は、1人あたりの料金だけでなく、ライセンスの一括発行、IDaaS・SCIM連携、入退社時の停止、ログ管理が重要です。大規模なライセンス管理を重視する場合は、ロリポップ!固定IPアクセスが候補です。
誰が接続したのかをIP単位で識別したい場合は、アカウントごとに専用の固定IPを割り当てるサービスを選びます。少人数から必要な分だけ導入する場合は、どこでもIPが候補です。
※参照元:Glocal VPN公式HP(https://glocalnet.jp/lp/vpn_01/)
※参照元:ロリポップ!固定IPアクセス公式HP(https://vpn.lolipop.jp/)
※参照元:どこでもIP公式HP(https://biz.freebit.com/dokoip/)
現在のインターネット回線とは別に追加できるVPN型サービスであれば、変更せず利用できます。ただし、利用中のネットワークで特定のVPN通信が制限されている場合は接続できないことがあります。
併用できます。たとえば、オフィス回線にはプロバイダ型固定IPを設定し、テレワーク中の利用者にはVPN型固定IPを付与する構成が考えられます。アクセス先に複数の固定IPを登録できるか確認してください。
VPNサーバーを経由する分、遅延や速度低下が生じる可能性はあります。ただし、体感差は利用回線、VPNプロトコル、サーバーの混雑、接続先との距離などによって変わります。実際の利用環境で試すことが確実です。
方式だけでは判断できません。VPN型には通信の暗号化という利点がありますが、アカウントや端末の管理が必要です。プロバイダ型でも、ルーターや公開機器の設定が不十分なら不正アクセスのリスクがあります。認証、端末管理、ファイアウォール、ログ監視を含めた構成で比較してください。
自宅や外出先から直接インターネットへ接続した場合は、オフィスの固定IPにはなりません。オフィスのVPNへ接続してからオフィス回線経由で通信する構成、またはVPN型固定IPサービスを利用する必要があります。
社内の状況や目的に合わせ、数ある中から適切なサービスを選ぶのは迷うものです。
ここでは、導入のしやすさやサポート体制など、企業の状況や目的別におすすめできる固定IP VPNサービスをご紹介します。