固定IPアドレスを取得する方法は、主に「VPN型固定IPサービス」「プロバイダの固定IPオプション」「固定IP対応SIM」「クラウド・VPS上への自社構築」の4つです。
どの方法でも同じ用途に使えるわけではありません。SaaSへアクセスする際の送信元IPを固定したいのか、社外から自社のサーバーや機器へ接続したいのかによって、選ぶべき方法が変わります。
一般的なインターネット回線でも、ルーターなどにはグローバルIPアドレスが割り当てられます。ただし、その番号が将来も変わらない固定IPとは限りません。また、回線によっては複数の利用者で1つのグローバルIPv4アドレスを共有する構成もあります。
取引先やSaaSの許可リストへ登録する、VPNの接続先として指定する、外部から継続的に機器へ接続するといった用途では、契約上固定されたグローバルIPが必要です。
固定IPの用途は、大きく2つに分けられます。
VPN型固定IPは送信元の固定に向いています。外部からの着信やポート開放が必要な用途は、プロバイダ型固定IPを中心に検討します。
| 取得方法 | 固定される単位 | 場所を問わず利用 | 外部からの着信 | 導入難易度 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| VPN型固定IP | 利用者・端末・グループ | 対応しやすい | サービスによる | 低~中 | SaaSのIP制限、テレワーク、複数拠点 |
| プロバイダ型固定IP | 契約回線・拠点 | 原則として契約回線のみ | 対応しやすいが契約・設定確認が必要 | 中 | オフィス全体、サーバー、NAS、監視カメラ |
| 固定IP対応SIM | SIM・モバイル回線 | モバイル通信エリア内 | プラン・構成による | 中 | IoT、M2M、遠隔監視、移動端末 |
| クラウド・VPS自社構築 | 自社で構築するVPNゲートウェイ | 構成次第 | 構成次第 | 高 | 独自要件、詳細な経路・ログ管理 |
固定IPを持つVPNサーバーへパソコンやスマートフォンから接続し、そのサーバーを経由してインターネットへアクセスする方法です。利用中の光回線、モバイル回線、プロバイダとは別に契約できるサービスが多く、現在の通信環境を変えずに導入できます。
SaaSや取引先システムのIP制限、テレワーク、複数拠点からのアクセスが目的なら、最初に検討しやすい方法です。
※参照元:インターリンク「マイIP」公式HP(https://www.interlink.or.jp/service/myip/)
オフィスや自宅で利用しているインターネット回線に対し、プロバイダから固定グローバルIPを割り当ててもらう方法です。ルーターから外部へ出る通信のIPが固定されるため、オフィス内の複数端末をまとめて固定IP化できます。
オフィス全体の通信元を固定したい場合や、外部から社内の機器へ接続したい場合に向いています。
※参照元:ASAHIネット「法人向け固定IPアドレスオプション」(https://asahi-net.jp/biz/service/option/fixedip/)
モバイル通信を利用するSIMに、固定グローバルIPを割り当てる方法です。光回線を引きにくい場所や、移動する端末、遠隔地のIoT・M2M機器などで利用されます。
※参照元:NTTPCコミュニケーションズ「InfoSphereモバイル スタンダードタイプ/マルチキャリアタイプ」(https://www.nttpc.co.jp/service/product/infosphere/detail/mobile/standard/)
AWSなどのクラウドやVPSに固定のパブリックIPを割り当て、VPNサーバーやプロキシを自社で構築する方法です。利用端末から自社のゲートウェイへ接続し、その固定IPを出口として利用します。
ネットワークを設計・運用できる担当者がいて、既製サービスでは満たせない要件がある企業に向いています。固定IPだけを手軽に使いたい場合は、運用込みで提供されるVPN型サービスのほうが導入しやすいでしょう。
※参照元:Amazon Web Services「Elastic IP アドレス」(https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/AWSEC2/latest/UserGuide/elastic-ip-addresses-eip.html)
| 利用目的 | 第一候補 | 選定時の注意点 |
|---|---|---|
| SaaSのIPアドレス制限 | VPN型 | 同時接続数、固定IPの共有単位、VPN切断時の挙動 |
| 取引先システムへのアクセス | VPN型またはプロバイダ型 | 利用場所、専有IPの要否、取引先の要件 |
| オフィス全体の固定IP化 | プロバイダ型 | 回線条件、ルーター、移転時のIP変更 |
| 自社サーバー・NASの公開 | プロバイダ型 | ポート開放、ファイアウォール、認証、固定IP数 |
| テレワーク・出張 | VPN型 | 対応OS、接続方式、サポート、自動接続 |
| IoT・遠隔監視 | 固定IP対応SIM | 通信量、回線管理、着信可否、設置エリア |
| 独自の通信設計 | クラウド・VPS自社構築 | 構築・監視・脆弱性対応を担う体制 |
次の質問に「はい」と答える項目が多い場合は、VPN型が向いています。
次の項目が中心なら、プロバイダ型を検討します。
VPN型を選ぶ場合、次はサービスを比較します。料金だけでなく、社内に専任担当者がいるか、利用人数は何人か、全員で1つのIPを共有するか、利用者ごとにIPを分けるかを確認しましょう。
できません。パソコンのネットワーク設定で固定できるのは、主にLAN内で使うプライベートIPです。グローバルIPを固定するには、プロバイダ、VPNサービス、SIMサービス、クラウド事業者などから固定IPの提供を受ける必要があります。
法人が継続的に利用できる固定グローバルIPは、原則として有料サービスです。無料VPNや無料プロキシは、IPが専有されない、番号が変わる、業務利用の安全性やサポートを確保できない可能性があるため、取引先システムなどには適しません。
DDNSは、動的IPが変わったときにドメイン名との対応を更新する仕組みです。ドメイン名で接続先を追跡する用途には使えますが、アクセス先へ固定IPそのものを登録する必要がある場合の代わりにはなりません。
契約上固定されていることを確認してから登録してください。現在表示されているIPが動的IPの場合、将来変更されてアクセスできなくなる可能性があります。
社内の状況や目的に合わせ、数ある中から適切なサービスを選ぶのは迷うものです。
ここでは、導入のしやすさやサポート体制など、企業の状況や目的別におすすめできる固定IP VPNサービスをご紹介します。